
SEが転職をしようとしていろいろ調べていると、
『システムエンジニアは転職を繰り返して年収を上げる』
…という都市伝説を見かけることがあります。はたして本当なのか?
いきなり真実を書いてしまいますが、ほとんどのケースでそんなことはありません。
たしかに転職することで年収アップすることがありますが、多すぎる転職回数は評価を下げるだけです。
転職は諸刃の剣。年収アップという高い攻撃力を持っている反面、場合によっては転職回数が経歴にダメージを与えます。
では、いったいSEは何回まで転職できるのか?何回までなら転職が許されるのか?
SEが許される転職回数
SEの転職は3回まで
最初に結論から書きます。わたしの転職活動での経験、周りの友人を見た限りの感想からしてSEの転職回数は、
- 3回までなら問題ない
- 4回だと多め
- 5下位以上は多い
つまり、SEの転職は多くても3回までにしておいたほうがいい、というのがわたしなりの結論です。
理由は後述しますが、プロジェクトリーダー・マネージャ・幹部職といったキャリアパスを描ける限界の年齢があります。35歳ぐらいが限界でしょう。
それなりにスキル習得、実務経験を積むために1社あたり数年勤務することを考えれば、逆算すると転職回数は3回まで、と導き出されます。
下記はリクナビの調査結果です。
だいたいわたしが感じている通りの結果です。20代~30代くらいだと転職者という枠のなかでみれば、転職回数が3回までが半数~半数以上を占めています。
つまり、世間一般の認識としても転職回数は3回というのが平均的であるということです。
理由がある場合は別
ただし、わたし個人としては転職回数というのは一概に何回までならOK・NGというのは決められないと思っています。人それぞれ背景事情が違いますからね。
たとえば、
- 仕事が合わなくて転職
- 人間関係がうまく構築できずに転職
という人もいれば、
- 親の介護が必要で時間の融通が利く職業に離職
- 年収があきらかに低すぎるので転職
という人もいます。つまり、
- あきらかに正当な理由があっての転職なのか
- 転職理由・原因が自分の中にあったのかどうか
- 外部的な要因なのかどうか
ということです。
転職回数は多くても3回まで?理由は?
SEが転職をすることで年収が上がる傾向にある
わたしの友人で、『SEは転職を繰り返して年収を上げていく』と主張する人がいました。
たしかにSEは他の職種と比較すれば転職をすることで年収が上がる可能性が高いと思っています。実際にわたしも年収400万円から600万円に年収が上がりましたので。
SEの年収が転職で上がりやすい傾向にあるのは、SEは高いスキルを保有しているため市場価値が高く、IT業界は人材の需要に対して供給が追いついていないため、企業は高額な報酬を支払ってでも人を集めたいという背景があります。
実際に海外だと転職を繰り返して年収を上げるという話はよく聞きます。転職しなくても『このモジュールは俺にしかメンテできない』と人質にして年収を上げたり、とか。
他の職種と違うのは、
- 誰にでもできる仕事ではない。
- この仕事はこの人にしかできない。
という理由があるから、年収を上げやすいのでしょう。
SEが頻繁に転職を繰り返してみた結果
わたしの友人は頻繁に転職を繰り返していました。ですが、その結果、最終的には登録制の派遣会社の派遣社員として派遣SEをやっています。
彼とは昔、メールでやり取りしていたのでしっかりログが残っていました。彼の経歴はざっくり下記の通り。
職種 | 期間 | 転職理由 |
派遣SE | 1年 | 派遣がイヤ |
派遣SE | 3ヶ月 | 派遣会社を見抜けなかった |
正社員SE | 半年 | 会社の規模が小さい |
正社員SE | 半年 | 給料が少ない |
派遣SE | 半年 | また派遣会社を見抜けなかった |
本物の派遣社員 | 永久就職(登録)? | 就職先がもうない… |
わたしと彼とのやり取りはここで終了しています。彼が派遣社員として働き始めてから数年は経過するところまでは確認しましたが、その後はわかりません。
転職をしても年収が上がらないケース
彼は3年ぐらいの間に5回も転職をしています。普通の人だったら3年の間の転職回数は1回、多くても2回ぐらいではないでしょうか。
彼は『SEは転職を繰り返して年収を上げていく』を口癖のように言っていました。だからわたしにも転職して年収上げたら?というアドバイスをよくしていました。
ですが、実際に年収が上がったという話は聞いたことがありません。
転職を繰り返しまくっている人間が高いスキルを保有しているでしょうか?新卒に近い状態で3ヶ月~半年程度で転職をしているようであれば、最初に作業の引き継ぎや研修などしかしていないと思います。
これはよく考えておいて欲しいのですが、いくらSEが市場価値が高かろうが供給が追いついてなかろうが、優秀でもない人材には高額な報酬は支払われないのです。
年収が上がる転職とは?
会社に評価されるのは保有スキル・実務経験です。
転職して年収が上がる可能性があるとすれば、何か1点について専門家と言えるほどのスキル・実務経験があるかどうかでしょう。
転職回数は多くても、1社にとどまっている期間が数年あったほうが良いです。
よって、逆算すると転職回数は3回まで、が妥当であると思っています。
1社につき3年、3回の転職、これで10年になります。大卒で入社したならば年齢は23歳、10年経過で33歳。
一般的なSEとしての転職は35歳あたりが限界ギリギリになりますので、3回の転職が妥当、という判断です。
ゆえに、ただ単純に転職すれば年収が上がる、転職回数が多いほど年収が上がるなんていうことはありえないんです。
多すぎる転職回数は全然実務経験を積めていない、会社に入ってもすぐ辞めてしまう人、経歴に傷をつけているだけです。
派遣社員となった彼の行方…
彼は最後に、『時給は最低でも3,000円はないとやってられない』と言っていました。
彼が言いたいことは、『正社員なんかより派遣社員のほうが高給取りなんだぜ!』ということです。見栄の塊、見栄のお化けみたいな人でした。
正社員であるわたしの時給は2,000円ぐらいといったところでしょうか?わたしの1.5倍の報酬ですね!
ですが、派遣社員は厚生年金も企業年金もないし退職金もない、さらにボーナスもないです。トータルで見ると派遣社員のほうが圧倒的に待遇は悪いです。
見た目上はよく見えても正社員に劣る。逆に言うと、派遣会社は表面上良く見せて派遣社員を集めているんです。
IT業界には派遣が多いし騙される
わたしも、わたしの友人も、入りたくなかったのに派遣会社に入ってしまった、という人が本当に多かったです。
派遣会社といっても、そこらへんにある登録制の派遣会社ではありません。正社員として派遣社員を抱える派遣会社・人材会社です。
正社員なのに派遣される。客先常駐とか言いますが、単純に派遣社員です。なぜなら、派遣先の企業の正社員と全く同じ仕事をするからです。それなら派遣先企業に就職して正社員で働いたほうが中間搾取もないし効率が良すぎる。
わたしの友人も転職を通して何度も派遣SEになってしまったように、IT業界の派遣会社というのはけっこう見抜けないものなんですよね。本当に悪質だと思います。『うちは客先常駐タイプの派遣会社です』とwebサイトに大きく書いてほしいぐらい。
わたしもかつて派遣会社の派遣SEでしたが、年収も低いし、中間マージン搾取ビジネスというせこいビジネスのため経常利益が少ないです。ゆえに社員の給料が少ない、場合によってはボーナスカット、残業代カットするとこもあるでしょう。派遣SEだけは…派遣SEだけはやめたほうがいい…。
まとめ
- 『SEは転職を繰り返すことで年収を上げていく』は本当でもあるけど、どちらかというとウソ
- 多い転職回数は経歴に傷をつけるだけ。
- ただし、親の介護が必要といった外部要因的な転職理由は除外される可能性あり
- 頻繁に転職を繰り返すということはスキル・実務経験が皆無な状態
- 多い転職回数は転職先もすぐに辞める人かもしれないと思われるだけ。
- SEの年収は転職回数で決まるのではなく、保有するスキル・実務経験から決まる。
転職を繰り返していると、いずれは正社員として就職することができない、行き場を失ってしまう可能性が高いです。転職は当たって砕けろのような無駄打ちはせず、慎重に選んでいきましょう。