
わたしは転職前、IT業界のしがない派遣SEをやっていました。派遣とはいっても、正社員で雇用されて出向・請け負いという名目で客先常駐タイプのSEです。
客先常駐タイプのSEというのはIT業界でもすごく多いのですが、とにかく年収が低いです。わたしは所帯持ちの30歳で年収が400万円程度しかありませんでした。
- SEは転職すると年収が上がる!
- SEは転職を繰り返して年収をあげるものなんだ!
なんていう話をよく見かけます。わたしが転職を考えた時、『それホント?』と疑問に思っていました。
実際に転職してみてわかったことがあります。今回はSEは転職すると年収が上がるのか?その理由について書いてみます。
SEは国レベルで人材確保をしようとするほど市場価値が高く供給不足
システムエンジニアは転職市場において価値が高い
わたし自身がそうだったのですが、システムエンジニアってきっと多くの人が自分を過小評価していると思います。
よく考えてみて欲しいのですが、プログラミングというものは誰でもできることでしょうか?
あなたもきっとシステムエンジニアをやってきたと思いますのでわかると思いますが、毎年新人の何人かはどうしてもプログラミングを理解できずに会社を辞めていきますよね?
さらに、プログラミングができないのに、他に行くところがないから会社にしがみつくという人もいます。
つまり、プログラミングができるっていうだけで本当は特別なことなんです。
開発の現場・前線にいると、ごく当たり前に全員がプログラミングできていたりするので特別なスキルという感じがしないのですが、普通はプログラミングなんてできません。人類という枠でみればプログラミングができるなんていう人は1%程度ではないでしょうか。
そんな優秀な人材の年収が低いはずがないです。
システムエンジニアは人手不足で引く手あまた
上述したように、プログラミングができる人というのは全体で見れば少ないです。
ですが、めまぐるしく変化していくITの世界。人手が全く足りていません。そのおかげで残業が増える…。
最近は36協定の見直しにより、残業がしづらくなりましたが、仕事量は減っていません。
作業を時間で解決することができなくなりましたので、作業を人の数で解決するしかないんです。
IT業界で働く人が転職しようと考えた時、行き先がない、内定が取れない、ということは、よほどの理由がない限りありえないでしょう。
たとえば、
- 全くプログラミングができない。
- そもそも実務経験がゼロ。
- 年齢が35歳を超えているのにリーダー・マネージャ経験なし。
転職活動をして感じたのですが、特に重視されるのが年齢です。35歳を超えると転職は厳しいと考えておくと良いでしょう。企業は社員をリーダー・マネージャ・幹部職にさせていきたいと考えています。35歳を超えるとキャリアプランを描けないんですよ。
実務経験がない!というのは、場合によっては転職先で再スタートすることができます。まぁよくはないですが、実務経験は隠すことってできちゃいますしね…。
企業は別の企業の仕組みを学びたい・取り入れたい
企業は中途採用での人材を欲しがっています。なぜなら、企業は常に革新を考えているからです。そのきっかけを得るために外の世界の仕組みを取り入れたいからです。
わたしは派遣SEでしたので、何か特別なスキル、高いスキルを持っていたわけではありません。派遣SEには下っ端な仕事しか回ってきませんので…。
ですが、大手企業に派遣されることもありました。わたしの場合、その大手企業での経験が転職活動においてプラスとなり、転職に成功?したと言えます。
企業のほうから、某大手企業での経験を買われて採用となりました。年収も650万円まで出せると最初は言っていたのですが、まずはお試しとして600万円からはじめさせてくれ、ということで、年収600万円で合意しました。
それだけ企業は外の企業の仕組みや文化、風習というものを取り入れたいものなんです。
企業は自身にない強みが新たにほしい
企業が欲しがる人材とは、なんでもできる人間ではありません。何か1つでいい、尖った能力がほしいんです。
わたしは派遣先の企業で図々しくも『正社員にしてください!お願いします!』と懇願したことがあります。(笑)
そこで人事の人と仲良くなり、転職に関する情報をたくさんいただきました。
そんなときにわたしがアピールしたのが、
- 派遣SEでしたので、いろんな会社で経験積んできました!
- C言語、C++、C#、java、PHP…ネットワークもデータベースも、なんでもできます!(浅いけど)
ということ。どうも『なんでもできる人』は人事担当者からすると印象が良くない、というか、何も響かなかったようです。
仕事というのは例えるなら『ドラゴンクエスト』のようなもので、勇者・戦士・僧侶・魔法使い、というように、それぞれ尖った能力を持ったメンバーでチームを組んで魔王というプロジェクトをやっつけます。僧侶が4人じゃ魔王は倒せませんよね。
そういった点で、別の企業で働いてきた人間を中途採用することで、企業は新しいスキルを身につけることができるし、もしかするとそれが新しい市場の開拓に繋がるかもしれません。
中途採用は企業にとって大きな利益をもたらす可能性があるため、人材を欲しがっているわけです。
企業はリーダー・マネージャがほしい
企業は基本的に社員を全員リーダー・マネージャにさせようとしています。
この先の時代、設計やプログラミング、テストは単純な労働力で人件費が安い派遣社員にさせようとします。
じゃあプログラミングといったスキルっていらないの?っていうとそうではないです。だってプログラミングがわからなかったら派遣社員がやった仕事内容が適切か判断できませんよね?仕事を割り振ることもできないはずです。
正社員は全員がリーダー・マネージャを目指します。そしてゆくゆくは幹部職になっていきます。
要は、企業は単純な労働力は安い派遣社員、人件費の高い正社員は頭となるリーダー・マネージャにさせたい…なってくれなきゃ困るんです。
ですが、新卒で雇って育ててみても、『あれ、こいつ…ダメじゃね?』って人、いるんですよね。
なので、企業は中途採用で、
- リーダーやってました!
- マネージャやってました!
って人がいれば、中途採用のほうが新卒を育てるよりもリスクが低いですよね。
ただし、転職はリーダー・マネージャ経験がないと不利なのか?というとそうではなくて、リーダー・マネージャ経験があると圧倒的に有利!というだけです。
ここでは、企業はリーダー・マネージャが欲しくて、中途採用の人でも、その道に進ませたいと考えているということです。
新卒から雇うと安く済む
今の時代は給料が上がらない時代です。
わたしも新卒で会社に入ってから、1年に1回、1,000円しか昇給しませんでした。基本的には残業代で稼ぐ会社でした。(おまけに1,000減給とかもありました)
社会的に給料が上がらない時代、企業は社員の給料を上げなくてもいい、という暗黙のルールが出来上がっているように思います。
おそらくIT業界のシステムエンジニアに限った話ではないと思うのですが、給料を上げるには良い結果を出すことではなく、根本的に別の給料体系の会社に転職するしかないのではないか?と思います。
上述しましたように、企業は社員をリーダー・マネージャにさせたがっています。ですが、新卒で10人雇えばリーダーになれるのは5人といったところです。
そんな将来的に成長するかどうかわからない人材に、毎年10,000円とか昇給させられますか?って話です。ゆえに、新卒から入った人は給料が上がりづらいんです。
わたしは転職をしなければ間違いなくずっと給料は上がらないままでした。給料があがらなければ、
- 妻はフルタイムで仕事。
- 子供は学校から帰宅しても家に両親は不在。
- がんばって働いているのに子供の学費を用意できない。
そんな未来が待っていたでしょう。
まとめ
- SEは市場価値が高い。
- SEの需要に供給が追いついていない。
- 企業はよその会社の仕組みを盗みたい。
- 企業は新しい強みが欲しい。
- リーダー・マネージャになれる人が欲しい。
簡単にまとめると、企業は中途採用のほうが低リスクで良い人材をゲットできる可能性があるため、高い人件費を出して出も雇う=年収が上がる、ということです。
でも転職を何度も繰り返すことで年収が上がる、上がり続けるとは思えないですね。職を転々とすると『この人うちの会社もすぐ辞めるだろうな』って評価が下がるでしょう。
ポイントとしては、なんといっても企業はリーダー・マネージャがほしいということです。たとえば、リーダー1人と派遣社員30人のチームとか、そういった体制をさせていきたいんです。
わたしの気持ちとしてはリーダー・マネージャはやりたくないです。責任重たいですもんね。
…でも、リーダー・マネージャができなかったとしても、正社員でさえあれば事務に回されたり、社内SEにされたりして、何かと仕事はもらえるものです。
わたしは以前、客先常駐の派遣SEだったのですが、行き先がなくなった派遣SEをたくさん見てきました。派遣SEは社員ではなく商品なので、会社の事務・経営側には回れないんですよ。商品が会計の仕事やります?やらないでしょう!
派遣先が見つからなければ、給料が大幅にカットされ、生活できなくなり、退職を余儀なくされます。暗黙的なリストラです。
転職にはリスクもありますのでわたしは強く勧めることはできませんが、もしあなたが客先常駐の派遣SEをやっているのであれば、最悪でも35歳まで(できれば30歳まで)に転職は考えてみたほうがいいです。派遣SEだけはホントにおすすめしないです。