
わたしは新卒で就職してから約10年、客先常駐タイプの派遣SEとして働いていました。
派遣SEはどうしても年収が低い、上がりづらいです。所帯持ちなのに年収は約400万程度…。
- このままでは生活できない
- 将来的に子供を大学に通わせられない
- 老後の生活ができない
といった壁にぶつかると判断し、転職をしました。
結果、年収はシステムエンジニア的には一般…いや、少しだけ多めと思われる、年収600万円になりました。
わたしとしては、年収が低いシステムエンジニアは転職して年収あげちゃいなと言いたいところですが、デメリットやリスクだってあります。
web上には、あたかも転職すればすべての問題が解決するかのように言う人がいますが、それはウソです。
わたしは、転職のメリット・デメリットをしっかりに理解した上で、ご自身で判断していただきたいと思っています。
SEの転職における不安、デメリット・リスク
1.年収が下がるかもしれない
年収が低いと悩むシステムエンジニアは多いと思います。
システムエンジニアの年収は450万円~550万円がいいところです。ネット上では550万円以上とされていますが、それはリーダー・マネージャを含めた年収です。一般的な開発職だけでの平均値ではありません。
年収400万円台だと、所帯持ちの場合は生活ができない!っていうぐらいに年収が低いと感じるはずです。わたしがそうでした。
年収を上げるために転職だ!と思っても、100%年収が上がるわけではありません。当然下がってしまう人もいます。
ですが、ここで勘違いしてほしくないのは、よっぽどおかしな転職をしない限り年収が下がるということはない、ということです。
おかしな転職とは、
- 正社員から派遣社員(客先常駐SE含む)に転職する。
- IT業界から別業界へ転職する。
- 大企業から中小企業へ転職する。
- リーダー・マネージャから一般的な開発職に転職する。
正社員から派遣社員に転職
上記の中で一番やってしまいそうなのが、『正社員から派遣社員に転職』ではないでしょうか。
IT業界には見た目的に普通の会社に見えて、派遣SEというのがめちゃくちゃ多いんですよね。やっかいなのが正社員として雇われているのに、単純な労働力として派遣されるということです。出世コースなんて皆無です。
派遣元企業にとって派遣SEは『人』ではなく『商品』です。
わたしが実際に経験してきたことですが、派遣SEは年収が低いです。これはわたしの周りの友人も同じでした。
そりゃそうですよね。派遣元という中間マージンを搾取する者がいるのですから。派遣先の正社員と同じことをしてても同じだけのお金をもらえるわけがないです。
SEやるなら派遣社員だけはやめておけ。これがわたしがあなたに1番伝えたいことです。
ネット上では派遣SEで自由な労働とかなんとか言う人もいますが、たいていの場合は地獄を見ます。
今までに派遣切りで本当に涙を流して泣いたおっさんSEを何人も見てきました。
そうならないようにするためには、自分の判断だけで転職先企業を選ぶのではなく、しっかり転職エージェントに希望を伝えて相談することです。
IT業界から別業界への転職
次にありがちなのが、『IT業界から別業界への転職』でしょう。
IT業界に嫌気が指した…という人もきっと多いはずです。
- ころころ変わる、後出しされるお客さんの要求仕様。
- でも納期は動かざること山のごとし。
- 納期に追われるのが辛い…。
- リリース後に不具合発覚するのが怖い…。
そこらのwebサイトはエンジニアが作ったものではないので、エンジニアの本当の苦しみってやつがわかっていませんが、わたしはエンジニアですので、あなたの苦しみはよくわかります。
ソフトウェアってどうしてもバグは出てしまうし、バグが出れば日程は狂う。でも納期は動かない。無理な開発が歪を生み、気づけばリリース後に不具合発覚…。犯人探しが始まり、調査をする手が恐怖で震える…。
IT業界を抜けたいという気持ちもわかりますが、別業界へ行くと未経験者の採用となり、高い確率で年収が下がります。あなたが第二新卒(一般的には3年未満ですが、わたし個人としては1年内と考えたほうが良いです)と言えるぐらいの若さがあるなら別業界へ転職という選択肢もアリですが、3~5年以上システムエンジニアとしてやってきたなら、IT業界は続けるべきです。そこからの方向転換は今より険しい道が待っているでしょう。
IT業界が辛いと思ったなら、開発から離れれば良いだけです。たとえば、社内SE・テストエンジニア、選択肢は他にもあります。
大企業から中小企業への転職
システムエンジニアは転職を繰り返すことで年収を上げる、という、デマっぽい都市伝説が流れていますが、これもさほど正しいとは思えません。この話が通用するのは海外ではないでしょうか。
転職をすることで年収が上がる可能性は高いですが、何度も転職を繰り返していては評価が下がるだけです。人事からしたら『この人うち来てもすぐやめちゃうんだろうなぁ』と思われるでしょう。
こういった話を信じて、大企業から中小企業、また零細のベンチャー企業に転職する人もいるようですが、たいてい年収下がります。それだけ、企業が大きければ待遇も良いってことです。
わたしは派遣SEで中小企業、大手企業、いろんな会社に派遣されました。派遣先の人と仲良くなって年収を聞くことがありましたが、やっぱり大手企業の年収は良かったです。
中小企業と比較して、大手企業の年収はプラス100万円といったところです。ちなみに派遣SEであるわたしは、中小企業の年収からマイナス100万円でした…。
- 派遣SE:年収400万円
- 中小企業SE:年収500万円
- 大手企業SE:年収600万円
ざっくりと上記が目安ではないでしょうか。
これは一般的な開発職としてのSEの年収です。リーダー・マネージャになれば、さらに年収がプラス100万円~200万円だと思って良いでしょう。まぁ派遣SEにはリーダー・マネージャという未来はないですけどね。
逆に言えば、大手企業ではなくても、中小企業でリーダーにさえなれれば満足のいく年収に到達できるのではないでしょうか。
リーダー・マネージャから一般的な開発職に転職
システムエンジニアは年収が高いように見える理由は、リーダー・マネージャの年収も含めて平均年収を出しているためです。
逆に言えば、一般的な開発職であるシステムエンジニアの年収は普通でも、リーダー・マネージャの年収は高いということです。
もともとリーダー・マネージャをやっていた人が、管理職は嫌だ!という理由で転職。一般的な開発職になれば年収は下がります。一言で言うと、『成り下がり』ですからね。
わたしは現在、リーダー業務もやっています。ゆえに、管理職をやりたくない!という気持ちもわかってしまうんですよね…。
- 部下は自分の思ったように動かないしスキルがない。
- お客さんからの無茶振り。
- 上司からの圧力。
- 上司・お客さん・部下からの板挟み状態。
わたしも、年収下がっても一般的な開発職のほうが良いと思うこともあります。
でもそれでは家族を養っていけないし、子供は大学にいけなくなります。老後も年金が出るかどうかわからない。貯金しなければならないけどできない。そんな未来が待っているでしょう。
リーダー・マネージャは辛いけど通らなければならない道です。むしろ、リーダー・マネージャになれるならいいほうです。世の中にはそういった出世コースにすら乗っかることのできない人もたくさんいるのですから。
2.仕事についていけないかもしれない
転職直後は大変です。慣れない仕事をできて当然といった感じで仕事を任せられます。
企業にとって中途採用というのは基本的に即戦力という認識なんです。
わたしは派遣SEとしても正社員SEとしても、どちらも経験があるのですが、どのプロジェクトにおいても未経験の場合は出だしはスロースタートです。だいたいまずは勉強から始まります。1ヶ月、長くて2ヶ月…。
つまり、1~2ヶ月してからはじめて、この仕事はできそうだ、できなさそうだ、ということがわかります。
1~2ヶ月経過しても仕事を理解できない、仕事をこなせないとなったら…きっと会社にいづらいかもしれません。
仕事を理解する、慣れるまでの時期は辛いです。生産性ゼロの状態で会社にいる、給料をもらうわけですから。
実際にわたしも何人かの転職者・中途採用者を見てきていますが、仕事ができる人できない人に分かれます。
仕事ができる人は既存の正社員よりもパフォーマンスが良かったりするし、仕事ができない人は開発職として入ったのにプロジェクトを転々としたりします。
まぁ派遣SEで派遣先を転々とするよりは、正社員になって社内のプロジェクトを転々としたほうがまだ安心感はありますけどね。仕事ができなかったとしても簡単にクビを切られることはなく、なにかしら仕事が割り当てられる。安定して仕事が供給されるのが正社員のいいところです。
3.良好な人間関係を築けないかもしれない
ご存知の通り、システムエンジニアとかいう人種は変わり者が多いです。特に、トップレベルのシステムエンジニアは変人が多い。
コンピュータが得意ってことは、人生の多くを人ではなくコンピュータと向き合ってきているような人ですからね。コミュニケーションに難があっても仕方のないことです。
わたしは現在、人間関係で困っていることはないのですが、派遣SEとしてやってきたころには変な人をよく見かけました。
- 常に怒っている…というか、キレてる。
- 仕事を無茶振りする。
- ノリが体育会系。
やっぱり中でもやっかいなのが、『キレる人』ですね。あなたの身近にもいるのではないでしょうか?
周りの人はみんな大人だからやり返さないので、キレる人はやりたい放題になってしまうんですよね。
システムエンジニアという仕事は、人に対して担当モジュールを割り当てたりします。そうすると、『このモジュールはこの人にしかできない』という感じになって、人が権力を持ってしまいます。
ゆえに、デカイ顔をするエンジニアも多いですし、もっと横柄な態度だと、とにかくキレる。
会社側としても他にできる人がいないから切るに切れないんですよね…。代替となる人材育成をするにしても、キレる本人から教わるのは困難ですし、代替えされないように設計書やコードを難解にさせたりします。
あ、ちなみに上述したキレる人は派遣SEです。年齢は40代後半、独身、推定年収400万円といったところでしょう。そんな人でも神になれる。それがIT業界です。(笑)
4.ブラック企業かもしれない
はっきり言って、IT業界の転職で一番可能性が少ないと思われるのが、転職したらブラック企業だった!というパターンです。
おそらくこれについては反対意見も多いかと思いますが、わたしが数々の企業を派遣SEとして転々としてきてわかったことは、IT業界はブラック企業が少なかったということです。IT業界がブラック、というのは一昔前の話でしょう。
IT企業がブラック企業になりえない理由は、
- システムエンジニアは転職市場において価値が高い。
- 企業は価値の高いシステムエンジニアを欲している。
- 需要に対して供給が追いついていない。(国レベルで育成計画するぐらい)
- ソフトウェア開発はほぼ人件費しかかからないため原価率が良い。
IT企業というのは本当はブラック企業になりえないんです。
ですが、昔は人手不足が目立ち、1人の人間に対しての負荷がどうしても高くなってしまいました。
しかし最近では36協定の見直しをはじめ、1人の人間の負荷を高めるやり方ではなく、残業ゼロで人を増やして働く、という方針になっている企業が多いように感じました。
むしろ残業で稼げなくなった分、システムエンジニアの年収を底下げするのではないか?と懸念するほどです。
わたしみたいな派遣SEで派遣元の経営が危ういとか、そういう変な企業に入らない限りブラック企業は問題ないでしょう。そういった過ちを侵さないために、自分で転職先を見つけるのではなく、転職エージェントでしっかり相談するようにしてください。
まとめ
- 転職したら年収が下がるかもしれない。
- 転職したら仕事についていけないかもしれない。
- 転職したら人間関係悪いとこに入るかもしれない。
- 転職したらブラック企業かもしれない。
- 不安はいっぱいあるけど、たいていが対策することで対処できるものである。
- 現状に満足していないのであれば、行動を起こさなければ何も変えることはできない。
わたしはあなたに今すぐ転職したほうがいい、とは言いません。
転職はタイミングが大切、と言われます。ここで言うタイミングとは、年齢、季節、景気といったタイミングではなく、自分の気持ち、だとわたしは思います。
やっぱり転職という大きな選択は何よりも、後悔しない道を選択する、というのが大切です。
あなたが転職しないのが一番後悔しない、というのであれば、転職しないという選択もアリだと思います。
わたしも転職しないのが一番無難だろうと思っていました。ですが、このままでは生活ができないと判断しましたので、『無難な現在』を捨てるだけの『期待値』があっただけの話なんです。
もし迷ったら、現在と未来の期待値を天秤にかけてみてください。